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2009/11/7実施
『アメリカ・コミュニティ開発金融機関(CDFI)最新調査報告会
――社会起業を支える非営利金融最前線――』のまとめ
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今回の報告会は他に類似するイベントも開催されている中、企業・金融機関、NPOや学生の方々など74名の方が参加してくださいました。
一般社会ではまだ認知度の低いCDFIや非営利金融に対して皆様に関心を持って頂けたことに大変勇気づけられました。

今回は、2009年9月にアメリカのCDFIや政府機関、CDFIから融資を受けるNPO、NPO支援を行うコンサルタントを取材・視察した内容と考察した結果を報告させて頂きました。5名の報告概要を一部抜粋した内容は以下の通りです。
※なお、詳細に関しては小関准教授の研究内容掲載ホームページをご参照ください。

小関 隆志 (明治大学経営学部准教授)
☆コミュニティ開発金融政策
・コミュニティ開発金融政策の必要性
・法律、補助金、減税によるCDFI支援
・連邦、地方政府の支援政策事例
・市民団体によるアドボカシー活動事例
⇒銀行に課せられたCRA法(銀行がその位置する地域に積極融資を促すことで貧困
地域の活性化を図る法律)により、貧困地域への投資が行われてきたが、
   金融危機の下でのCRAの限界
→CDFIへの投資の減少(経済環境の影響を受けやすい)、
   →政府による補助金でのCDFI支援の必要性(1年の時限立法)

水谷 衣里 (三菱UFJリサーチアンドコンサルティング研究員) 
☆CDFIの活動実態
・アメリカのCDFI支援体制(資金の出し手・調達方法・支援方法の多様性)
・CDFIの分類(規模、融資先、専門分野など)
・CDFIの活用実態事例
  ⇒多様な経営資源を調達できていること(ヒト・モノ・カネ)がCDFIの発展に寄与
  ⇒民間非営利活動における財団の果たす役割の大きさ

土堤内 昭雄 (ニッセイ基礎研究所主任研究員)
☆レッドライニングと公共住宅政策
・レッドライニング(低所得者層の居住地を囲い、その地域への融資を行わないという
差別)の背景
・アフォーダブル住宅の発展
・CDFIの役割
  ⇒CDFIは単なる融資機関ではなく、コミュニティ開発を通じて地域課題を解決する
ための事業を支援している。

尾山 絵美子(金融機関勤務)
☆先進国におけるマイクロファイナンス
・マイクロファイナンスは途上国のものではないこと
  ⇒先進国から始まったマイクロファイナンス(ショアバンク)
・先進国におけるマイクロファイナンスの導入モデル
・貧困者に対する直接的な金融サービスだけがマイクロファイナンスではない
  ⇒NPO・社会的企業への金融サービスを行うことで、間接的に貧困者への支援を行う
   方法もある。(広義でのマイクロファイナンス)

坪井 眞里 (東京コミュニティパワーバンク理事長)
☆CDFIとNPOバンク
・NPOバンクとは(東京CPB概要紹介含む)
・全国のNPOバンクの現況
・非営利の市民金融を阻む法制度(金融商品取引法、改正貸金業法)
・CDFIと日本のNPOバンクの比較
  ⇒現在日本のNPOバンクの規模はCDFIの1/100や1/1000であるが、
   アメリカにおける初期のCDFIも同様の規模であり、これからのNPOバンクの
可能性を感じた。
  ⇒一方で、CDFIは企業財団等からの大規模な資金集めを行うが、NPOバンクは市民
からの意志あるお金として集める等、目的や方針に違いがある。


上記の内容及び質疑応答を合わせて3時間の報告会でした。
坪井さんへの質問が圧倒的に多く、NPOバンクに対する関心の高さを実感すると共に、
実務で実践して結果を残すことが周りの人を巻き込み、人を動かしていくのだと感じました。