新型コロナウイルス感染症に伴い、昨春からオンライン(Zoom)で毎月の理事会を開催しています。理事会にあわせて、不定期に内部学習会も行っています。
先月は11月19日に賛助会員の濱崎研治さん((株)リスク・マネジメント研究所)に「生命保険契約の流通化プロジェクト」というテーマで発表していただきました。
参加者からは「保険会社から支払われる保険金を返済の原資とする融資については保険事故が発生して保険金が支払われる時期が合理的に予想できないのではないか」という意見も出され、融資のスキームをどのように組み立てていくか、案件ごとの課題が残されています。
以下、濱崎さんの発表要旨です。
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コロナ禍は生活困窮者を今なお発生させ続けている。「特定非営利金融法人(以下、「NPOバンク」という。)」が行う「特定貸付契約」については総量規制が適用除外とされ、また生活困窮者向け支援貸付け等が要件とされている。
そこで今回の研究発表は、深刻な疾患を抱える生活困窮者に対して、彼らが加入する生命保険契約の質権設定による貸付けを検討してみた。NPOバンクを質権者、保険契約者を質権設定者、保険者を第三債務者とし、被担保債権として死亡保険金や高度障害保険等とするものである。
生命保険契約には「契約者貸付け」という制度があるものの、その金額は解約返戻金額の何割というものであり、死亡保険金額に比して微小な額であることが少なくない。この「契約者貸付け」に代わる生活費や治療費の捻出や高齢者の介護費用にも利用できるような金融の商品の開発が今切望されている。
生命保険契約の保険金請求権を質権担保とする貸出や保険契約の投資家による譲受は欧米では30年ほど前より事業として行われており、その福祉的効果も評価されているところである。また最近では我が国の近隣諸国においても意見公募手続(パブリックコメント)が行われたり、白熱した議論がされている。本邦においても生活困窮者への金融支援策について、多面的に研究を引き続き深耕させたいと思います。
(株)リスク・マネジメント研究所 濱崎研治